パンプスとスニーカー
 「あらま。で、何?家に帰って来いって?」




 ニヤニヤ笑う顔が、他人事だと思って完全に面白がっている。


 が、今の武尊にはそれを咎める気力もなかった。




 「それどころじゃねぇよ。見合いしろとよ」

 「見合い?!」




 それは予想の範疇外だったらしく、さすがの悪友も驚いている。




 「なんだよ、それ。俺たち、まだ大学生じゃん?お前みたいな糸の切れた凧のようなヤツを自由にしてると、変な女にひっかかるから、安心できる女に轡を締めさせて、バッチリ監視させようってか?」

 「…………」




 ドンピシャな推察にぐうの音も出ない。




 「もともと、お前の女癖の悪さには、末っ子に甘いお前んちの姉ちゃんたちも眉を潜めてたもんな」

 「……お前ほどじゃないって」

 「そうか?高校ん時も、別れ話でこじれて大騒ぎした女が、家まで乗り込んでったことあったよな?」





< 37 / 262 >

この作品をシェア

pagetop