パンプスとスニーカー
 いやなことを思い出した。


 あの時もたしか、武尊の方が二股をかけられて別れ話になったはずなのに、単なる出来心だったとかなんとか縋りついてきたあげくに逆ギレされたのだ。




 「お前って、けっこう経験値あるはずなのに、女を見る目がないよな」

 「うるせぇよ」




 自覚はある。


 …よくも俺、女性不信にならないよな。


 なんて…。




 「末っ子気質つーか、マザコンのシスコンつーのもあるだろうけど、一見包容力がありそうなお姉さんタイプに弱いからな、お前は」

 「……うぐ」

 「で、キレイめの女だったりしたら、すぐに食いつくし?まさにどこからどう見ても、意外性のない女ばっか」




 その点、壮太の選ぶ女は失敗が少ない。


 互いに遊びだと割り切っているから別れ話でもゴタついたとは聞かないし、不誠実なくせに女友達も多い。


 女と言えば、ヤれるかヤれないか、二種類しかいない武尊とは真逆の男だった。




 「まあ、検事か弁護士か、どちらかになることを条件に医学部に入るのを免除されて、自由気侭な生活を手に入れたんだ。突っぱねるわけにもいかねぇわな。実際、あんまり派手な醜聞はまずいぜ?」

 「ああ、ようはそういうことなんだよな。結婚は先の話にしても、決まった女を作れとさ」




 うんざりだ。


 やっと手に入れた自由だったが、結局祖母や姉たちの手のひらの上で踊らされているのには変わりがない現状。




 「じゃあ、いいじゃん。とりあえず見合いだけして、気が合うようなら良し。無理そうなら断るなり、しばらく様子見で、適当な時期に破談すれば?」





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