パンプスとスニーカー
 キキィ~~。




 「到着」




 衝撃を感じさせない動きでスムーズに車を停車させ、一連の動作でギアをパーキングに入れ、ハンドブレーキを上げて完全に駐車させる。




 「ありがとう、助かったわ。今度、お礼に奢るわね」




 綺麗に装飾された爪先をさりげなく誇示して長い黒髪をかきあげ、にっこり笑う女の真っ赤な唇へと軽くキスを落として、綺麗に微笑み返す。




 「いいよ、お礼はこれだけで。でも、また困ったことがあったら、俺を思い出してくれる?もちろん、次ははデートの約束を報酬にもらうけど?」

 「ふふふ、どうしようかしら」




 魅惑的な笑みを浮かべって、けれど互いの目の中にあるのは、一途な恋心ではなく、駆け引き。


 武尊が車の運転席から降りて助手席へと回り、手ずからドアを開けて手を差し伸べ、女が車から降りるのを介助する。


 それを女も当然と受け入れる。




 「じゃあ、また」

 「ええ、またね」




 女が手を振り去ってゆくのを見送る武尊の背後から、聞き慣れた声がかかった。




 「なんだよ、大学まで同伴しねぇの?」





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