パンプスとスニーカー
 「じゃあさ、具体的に何が怪しいとか思うわけ?」

 「まず一つめは、金額。あたしには簡単なことだと言いながら、夕食を一緒するだけで3万円も払うとかありえない話でしょ?しかも買い物だの野暮用だの、一部言葉を濁して、ハッキリさせていない部分があるわよね?」

 「…なるほど」




 さすがは超難関の法学部で5指に入ると言われている俊才の女だ。


 見た目の子供っぽさだけの女じゃない。


 上手い話には裏がある。


 当然のことだろう。


 気遣いが裏にでるかもしれない。




 「もう一つは、それだけの値段を払おうっていうんだから、お遊びとかそういうんじゃないんでしょ?」

 「もちろん、俺にとってはとても重大な事情が関係することだよ」

 「それなら、どうしてそんな重大な事情からの申し出を、これまでほとんど接触をしたこともない、ほぼ知人レベル以下のあたしにもちかけてきたの?」




 どんなに逼迫していても、すぐに飛びついてこないところも、浅はかではない証だ。


 武尊は内心で感心する。


 …ふぅん、けっこう手強いじゃん。





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