パンプスとスニーカー
 「学校にまでは乗り付けてないだろ?」

 「近所に駐車場借りてれば一緒でしょ」




 呆れられてしまった。




 「顔だけで言えば、北条君ってけっこうあたしの好みなんだけどな」

 「そう?じゃあ、俺と付き合う?」




 あっさり言う顔にはまったくの誠意がない。


 が、もしここで美紀が同意すれば、本気で付き合うつもりなのだろう。


 ただし、何人かのうちの一人としてで、壮太からいろいろ聞いている美紀もそこのところはまったく期待していない。




 「やぁよ。壮太はたまたま幼馴染みだから付き合ってるけど、本当だったら、北条君や壮太みたいな恋愛に真面目じゃない人はお近づきになりたくないタイプ」

 「ひでぇ」

 「だよな?たまたま出くわしたってだけで、俺はガッコに来る必要もなかったっていうのに、アッシーさせておいてこれだぜ?こっちは朝帰りでフラフラだったんだぜ?」

 「来る必要がないんじゃなくって、単位が足りてるのをいいことに、自主休講決め込むつもりだっただけでしょ?」




 三人で歩いている間にも、通学途中の女子大生や、通りすがりの女性たちが、武尊や壮太へと視線を寄越しては、きゃあきゃあと騒ぎたてている。


 見た目だけは、特にイケメン好きではない美紀にしてみても、どちらも超一流の男なのだ。


 …慣れてるけど、また反感買っちゃいそう。


 基本フェミニストの壮太は、恋愛関係にない女の頼みでも簡単に引き受けてくれる。


 お遊びはあくまでもお遊びで、割り切った相手としか関係を持たないから、綺麗な付き合いの仕方だと言えるだろう。


 しかし、武尊は違う。


 そういうところがどうも美紀はダメで、武尊が壮太の高校時代からのツレでなければ、こうして親しく話すこともなかっただろう。


 …まあ、根は悪いヤツじゃないんだけどね。


 意外に世知辛いというか、親しい相手はともかくとして、脈のない女やメリットが見込めない相手には、上辺ばかりの愛想でそっけないところも武尊にはある。


 周囲からの圧力を鑑みれば、便利だからとあまり壮太を頼るのもそれはそれで面倒がありそうだ。


 どうしたものかと美紀が校門の方へと顔を向けると、見覚えのある人間が歩いているのを発見した。




 「あ…、武藤ッチだ」





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