パンプスとスニーカー
 美紀の声かけに武尊と壮太が視線を向ければ、影を背負った地味な女が項垂れて歩いている。




 「お~い!むとぴょ~んっ!!」

 「「……むとぴょん」」




 大学生にもなって珍妙な呼び名に、思わず武尊と壮太が顔を見合わせた。




*****




 …つ、疲れた。


 一晩眠って、ある程度疲労は回復したはずなのに、すでに気持ちが折れてしまっている。


 朝早く連絡のあった不動産屋からは、やはりどうやら保険の交渉は長引きそうで、早くても2週間は火災保険のお金が降りそうもないという。


 不幸中の幸いは、火事の原因が放火などではなく、隣の部屋の学生のタバコの不始末。


 よりにもよって寝タバコをして、ベッドの上にタバコの吸殻を落としたまま、スキー旅行だかなんだかに出かけて留守をしていまっていたらしい。


 …ホント、ありえない。






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