さよならの準備はできている
私はその日姉を山の近くの、人気のない公園に誘いだし、ナイフで殺害。

遺体をトランクにつめ、山奥の森に捨てた。

これで邪魔者は消えた。
拓くんの代わりに復讐も果たせた。

これで拓くんは私を見てくれるかもしれない。

でも予想外のことが起きてしまった。
拓くんが逮捕されてしまったのだ。

遺体の移動に使った姉のトランクには、拓くんの指紋がべったりついていたのだ。

さらに姉の死亡時刻である時間には、拓くんのアリバイはなかった。

これをきっかけに、拓くんは殺人犯として逮捕されることとなってしまった。

拓くんを助けようにも、自分が犯人だと名乗れるわけもなかった。

逮捕当日、拓くんの逮捕の瞬間を目の前で見ていた。
そして私の姿を見つけると、拓くんは私にこう言った。

『お前が咲弥と同じ年齢になったとき、絶対に殺しにいってやるからな』

拓くんは気づいていたんだろう。
"私が姉を殺した"ことに。

拓くんは私を憎んでいる。
それは私にとって、むしろ嬉しいことだった。

私のことを考えてくれる…
それがたとえ憎しみでだとしても、とても嬉しかった。

私はそれから6年、拓くんを待ち続けていた。
そしてやっと、会いに来てくれた。

何て私は幸せなんだろう。

「これでもう、拓くんは私のもの」

私は拓くんが握っていたナイフを拾い、自分の首にあてる。
息絶えた拓くんを見下ろしながら、私は笑った。

そして首にあてたナイフを、勢いよく引いた。

< 13 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop