さよならの準備はできている
3階の奥の3年F組は、校舎に入ってから一番遠い。
なので予鈴がなるぎりぎりでは出欠点検に間に合わなくて、初めは遅刻者も多かった。

予鈴の10分前だし、今日は余裕だな。

そう考えながら教室の近くにきたとき、教室内が騒がしいことに気づいた。

「みんな今日はいつも以上に騒がしいね」

元々騒がしいクラスだが、今日は一段と騒がしい。

「まあ、いつものことだよ」

そう言って澪ちゃんが教室の後ろのドアを開けたが、誰も私たちに気づかないくらい騒がしい。

みんな携帯を手に持ち、何かを話している。

「あ、佐藤さんたちおはよう」

後ろの席に座っていたクラスの女子が、こちらに気づいた。

「おはよう。みんななんで騒がしいの」

そう尋ねると、携帯の画面を指差した。

「なんかね、服役中の犯罪者が刑務所から脱獄したらしいの」

携帯の画面には、速報で脱獄のニュースが流れている。

「どのチャンネルもこの話題一色なの」

チャンネルを変えて見せてくれるが、確かにどのチャンネルも同じニュースを流しているようだった。

「世間はわかるけど、クラスのみんながなんでそのニュースで騒いでるの?」

澪ちゃんが尋ねる。

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