さよならの準備はできている
榎田は日本で一番難関と言われているT大に通い、姉と同じ優秀な人だった。

6年前、姉が榎田と仲良く付き合ってた頃は、時々榎田を家に呼んでいた。

私は家にくる度に榎田に勉強を教えてもらったり、遊んだりしていた。

でも姉が亡くなって、犯人として手錠をかけられた榎田は私に言った。

「お前が咲弥と同じ年齢になったとき、絶対に殺しにいってやるからな」

その時の怒りに満ちた顔は、今でも覚えている。

榎田は有言実行な男だった。

たとえ刑務所に収監されていようと、私を殺しにくるに違いないと確信していた。

だから6年経った今、姉の命日で私が亡くなった姉と同じ18歳になったこの日、榎田は刑務所を脱獄したのだろう。

なんて誕生日なんだろう。

榎田は必ず、私の前に現れる。
そして私にナイフを向ける。

私はもう、その覚悟ができていた。

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