「好き」と「好き」


リビングのドアを開けると、すでに奏多とお母さんとお父さんは椅子に座っていた。


わたしも奏多の横の椅子に座った。

わたしが座ったのをみるとお母さんは、


「よし、じゃあとりあえず話すね。わたしとお父さん、今日の夜帰ってこれないから」

と言った。


わたしはただ


「へーー。そーなんだー」


としか返せなかった。


しかし、わたしの心の中はいま大嵐状態。


え!なんで!なんで、こんなことのために一時間も早く起きなきゃいけないの!!


いままでだって仕事が終わらなくてお父さんかお母さんが帰ってこなかった日もあるし


今更こんな風に言わなくてもサラッと…そう、学校に行く直前くらいにサラッと言ってくれればそれでいいのに…。


わたしの一時間の睡眠時間を返せーっ!


と、まあこんな感じ。


でもまあやっぱ理由があるみたいで、お母さんは続けて言った。


「というのもね、熊本のおじいちゃんがね倒れちゃったみたいで、これからちょくちょく様子みないといけなくなっちゃって。仕事の後にお父さんと一緒に行くから、この家には帰れないのよね」


「ってことは、これからも帰れない日があるってこと?」


「まあ、そゆことね。でもしっかり者の奏多がいれば大丈夫ね」


え?うん??

そこは『しっかり者の美沙』じゃないの?!

横をチラッと見ると


ニヤリと笑う奏多が。


「まかせとけって」





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