月の光に照らされて
何の話をしているのかはわからないが、嬉しそうに…楽しそうに話をしているミルの表情を見れて、フェイは少し笑みが浮かぶ。この婚約が上手く進めば、彼女は幸せになれると願っているからだ。


「これで…、心置きなく戻ることができるな…」


終わりまで見届けることはせず、大樹から降りると、小さな声で「さよなら」といって、その場を後にした。



それを見ていたのか、執事のグラウンは目を盗んで屋敷から外に出て、フェイを追った。


「お待ちください、フェイ様」

「俺の事を覚えてるんだな。

いくら主人の命令とはいえ、追い出した張本人だもんな。で…、何か用でも?」

「後悔しております。あれがお嬢様のためだと思った好意が、悲しみに堕ちるなんて…。

お願いします。またいなくなるのを知れば…。貴方様しかお嬢様の笑顔を護れる方はいないのです」

「その願いは却下だな。俺がここにいる方が、不幸を喚ぶ。

いいお相手が今いるだろう?そいつに任せるよ。ミルのこれからを」

「本当にいいんですか?貴方はそれで後悔しないんですか?」

「………、じゃあな」


< 12 / 43 >

この作品をシェア

pagetop