月の光に照らされて
闇の市場と呼ばれる《バリュセルット》のスラム街。夜の方が賑わうこの街では、津波がくる前の海の静けさのように、何かを待っている。


そこに一人の影が揺らめく。街に入った瞬間が開始の合図か、闇に紛れた集団が奇襲のように飛び掛かり、影を斬る。切り合った者同士が仲間を斬り、揺らいでいた影は同様している連中を一斉に斬り払った。


その者の眼には殺戮に溺れた汚れた色に染まり、不気味な笑い声が、人を斬るたんびに発せられる。

物の取引を行う倉庫に誘導されるように配置されているのか、どんどんそちらに向かわさせる。


ガラガラと響く音をして扉を開けると、暗い倉庫はぱっと照明が点けられ、光に照らし出された。


「来たな、闇の殺し屋」


待ちに待ったようにその闇から、忍びの長、帝朧が現れた。上空にある気配もただならぬ気質を感じ、少しばかり警戒する。


「ミルはどこだ?」

「商品だから丁重に扱われているだろう。どこにいるかは知らないが、この街のどこかには必ずいるだろう。

会える可能性は、ないがな!」


一つ手に持った苦無が真っ直ぐに投げられた。それに向かって、帝朧は手に印を結び苦無に手を向ける。


「影苦無・多重分身の術」


広範囲に拡がった苦無の攻撃に、高く跳び上がる刹那。予測された回避のように警戒していた上からの気配が二つ、刹那に向かう。

二人して同じ印を結び、口を膨らませそれを吐いた。


「火遁・爆炎鳳」


口から吐き出したには大きすぎる火の弾が、酸素を燃やしながら刹那に直撃する。


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