月の光に照らされて
(ここまでの強者だとは…、だがこの策だけはよめん!)


次に取り出したのは手裏剣であり、先程の苦無と同様に数を増やし、広範囲に乱れ飛ぶ。

剣で向かい来る手裏剣を素早く弾き落とすと、頭上に向かって刃を掲げた。墜ちてきた鉄は細かく刻まれ、霰のように降り注いだ。


「上空にいたんだ。仕掛けの罠など気付いている。

急いでいるんだ。もう…死ね!」


瞬時に眼の前に現れた刹那に、反射的に胴体を反らして蹴りを上げた。だが、それを関係ないように剣で斬られ、それは煙となって消えた。


「っち!分身か!」


「圧倒されたのも、半ば演技だ。本当の戦いはこれからだ!」


殺した死体も偽物だったようで、幻覚が解け、落ちているのが造られた人型であるのを確認した。


「我が末裔の秘術、とくとご覧あれ」


ぼぅ、と光の燈る音が小さく響くと、三角形に何かの呪が敷かれたものが浮き上がり、それに捕縛されたのか身動きが出来ない。


「爆ぜろ」

「火遁秘術・業火爆葬の陣」


まずいと心の中で叫びながらも、この呪から逃れ出ることは敵わず、三角形の頂点からは焔の柱が噴き出す。大地は温度千を超え、皮膚を焦がし始めた。


(この身が朽ちようと…、あいつは俺が!)

闇を従え、暗黒よ集え。そう心に強い念いを詰め、身体を唸らせる。この焔の中で闇は蠢き、最大威力となる集約された炎が爆ぜる瞬間、悪魔が再び甦った。


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