月の光に照らされて
月明かりが優しく彼等を見守っていた。柔らかく包み込まれたような光に、ミルは嬉しそうに見上げている。


スラム街ではようやく警備隊が到着したのだが、崩れ去った闇の市場は見る影もなく、捜索活動の騒ぎ等、二人には知るよしもなかった。


「戻らないのか?」


丸一日ここにいたので、飽き飽きした風景を見ながら、フェイがミルに帰ろうと間接的に言葉をこぼす。でもミルは、戻ってからこんなに寄り添うこと出来ないので、できる限りここに居たいと主張する。

ミルに弱いフェイは、結局仕方なく動くことはせず、寄り掛かるミルの身体を支えていた。


(我が儘な性格は、昔から変わらず…だな)





スラム街は、新たに派遣された保安官や、国の兵士達が来たようで、建物に使われた素材を運びやすい形にして、順調に片付けていた。でてきた死体は埋葬されるべくブラックリストから外され、この闇の市場が消えたことにより、人身売買や裏取引は表だって出来なくなっただろう。

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