強制結婚 ~石油王の妻にさせられた私~
「失礼します」
もうジャミール氏が来ていると知らせを受け、私は慌てて応接室に入った。
私が入った途端、中にいた男の人が立ち上がる。白いゆったりとした服を着た、褐色の肌で彫の深いイケメンだった。
「はじめまして。ジャミール・ラシード・アル・アズィーズです」
私が口を開くよりも先に、流ちょうな日本語で言われる。びっくりして、一瞬、返事をするのも忘れてしまう。
「どうしました?」
「あっ、いえ! その、日本語、お上手なんですね……」
英語を話さないといけないと思って、昨日の夜、一生懸命覚えてきたのに。
楽でよかったといえばよかったけど、なんだか拍子抜けだった。
「日本でビジネスをするなら、日本語ができて当たり前ですから。でも、変なことを言うかもしれないので、そのときは教えてください」
「そんな、すごくお上手です! 私に教えることなんて……」
「ありますよ。たとえば、貴方のお名前とか」
「す、すみません。榛名由香(はるなゆか)です」
名刺を差し出す。
そのときについ、あわて過ぎたせいで足がもつれた。
「あっ……!」
もうジャミール氏が来ていると知らせを受け、私は慌てて応接室に入った。
私が入った途端、中にいた男の人が立ち上がる。白いゆったりとした服を着た、褐色の肌で彫の深いイケメンだった。
「はじめまして。ジャミール・ラシード・アル・アズィーズです」
私が口を開くよりも先に、流ちょうな日本語で言われる。びっくりして、一瞬、返事をするのも忘れてしまう。
「どうしました?」
「あっ、いえ! その、日本語、お上手なんですね……」
英語を話さないといけないと思って、昨日の夜、一生懸命覚えてきたのに。
楽でよかったといえばよかったけど、なんだか拍子抜けだった。
「日本でビジネスをするなら、日本語ができて当たり前ですから。でも、変なことを言うかもしれないので、そのときは教えてください」
「そんな、すごくお上手です! 私に教えることなんて……」
「ありますよ。たとえば、貴方のお名前とか」
「す、すみません。榛名由香(はるなゆか)です」
名刺を差し出す。
そのときについ、あわて過ぎたせいで足がもつれた。
「あっ……!」