奥さんの身柄、確保!
「あのね?私、駅前のデパートで売り子してるんだけど……」

 私は週5のシフトでハンカチとかスカーフとかが売ってある、例の1階の売り場に入っているのだ。

「近頃よく熱い目線を感じるの。こう、ネットリというかジットリというか。
 多分、私を見初めたシャイボーイが言い出せないでいるんじゃないかしらん?」

「……ほ~う」

 しらけた目で彼は調書記入する……フリをしている。

「うっ、証拠もあるもん!……ホラ見て」

 私は仏壇の引き出しから、手紙の束を取り出した。

「スゴイでしょ?ラブレター。
 すごく私のことよく見てる人でね、『今日はどこにいた』とか『何をしていたか』とか、事細かく書いてあるのよ?
 お名前を書いてないからお返事もできないんだけど。
 きっとすごくテレ屋さんなんだと思うのよね~、あれ?」

 難しい顔で手紙の中身を確認していた柿田巡査が、急に憐憫の眼差しを向けた。

「奥さん、貴女どんだけオメデタいんです……」

「ほ?」
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