奥さんの身柄、確保!
「………」

「………」

 我々が机に突っ伏して頭を抱えてから、10数分が経過した。
 柿田巡査がそのままの姿勢でボソリと聞いてきた。

「奥さんアナタどうするんです」
「うう…」
 
 まるで争いに疲れた往年の夫婦のようだ。

「犯人(ホシ)は……今夜にでも来ますよ」

 唸るような低い声が私のムネに突き刺さる。
 

「……こうなったら仕方がない」

 と、彼はもったりと重たそうに顔を上げた。

「奥さん。…これは本来の業務ではない。だが本官幸いにも、今日17時以降は非番であります」

「はあ」

 つられて顔を上げた私は、マヌケな返事を返す。

「実は…こちらへ向かう途中、困っていたお嬢さんを助けた際に、今夜はデートの約束を交わしていたのですが…フッ」

……なに?

「背に腹は変えられない……なんと言っても尊敬する行森警部の奥さんだ!
 この柿田雅次、今夜一晩、命に変えても貴女をガード致します!」

 
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