奥さんの身柄、確保!
 私こと、行森一花(ユキモリ イチカ)は、都心から1時間半ほどの閑静な住宅街に1人で住まう兼業主婦。

“主婦”といってもまだ22歳。容姿、言動ともに子供っぽいらしく、あまり他人には信じてもらえない。

 何故、主婦なのに1人きりなのか。
 単身赴任?それとも離婚?

 いや違う。

 実は、結婚してすぐにダンナ様が急死してしまったのだ。
 
 7つ年上のダンナ様との恋人・結婚生活は、余りに短かかった。
 彼とは勤め先の合コンで出会い、その日のうちにお持ち帰りされてしまったのが縁。
 寝物語に、彼が自分と同じ天涯孤独の身なのだと聞いてすぐに意気投合し、なんと3ヶ月でスピード結婚した。

 挙げ句、ラブラブ新婚生活わずか6ヶ月で逝ってしまうという惨事に見舞われて……

 以来、彼の位牌とこの家をたった1人で守っている。

 家のローンは皮肉なことに保険金で完済し、仕事も持っているから生活には困っていない。
 なので他に帰る場所もない私、そのままここに住んでいる。

 今一つ頼りない私を心配したデパートの仲間は、『そろそろ次に進みよ~』とか『もう充分尽くしたよ』と誘ってくれるが、中々そんな気にもなれない。

 それには『彼を忘れられなくて』とか『貞節を尽くし』といったウェットなものではない、とある理由があるのだが…

恥ずかしすぎてとても言えない。

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