奥さんの身柄、確保!
「そりゃあもう‼
 奥さん、僕らの年で、行森警部の名前を知らないヤツは居ませんよ。
 ノンキャリの叩き上げから、数々の手柄を上げ、昇進試験を次々突破、わずか28歳で警部、警視庁で麻薬捜査のエースとして……って、エー?
 知らないのぉーー⁉」

「ダンナサマのお仕事の事は、よく分からなくって」
 エヘヘと笑う。

 彼はにわかに天を仰ぎ、さらに仏壇向かってに語りかけ始めた。
「ああ、何てこった……知らない…あの行森警部を…奥さんが。
 しかし警部も、こんなウカツで、しかしカワイらしい方を残して逝ってしまうのは、さぞや心残りだったコトでしょう。
 …奥さん、ご安心下さい!」

 彼は遺影に敬礼した後、私を振り返った。

「貴女は、尊敬する行森警部の大事なヒトだ」

 両手をギュッと眼前で握る。

「きゃんっ」

「この柿田雅次、命に変えても貴女を護って見せましょう」

 爽やかに白い歯を見せて笑った。
 途端、ドキリと大きく動悸が打った。顔がカァッと火照りだす。

「ははは、はいぃ、ゼヒとも♥」

 私もまた、彼の手を握り返していた。
< 9 / 30 >

この作品をシェア

pagetop