ふぇありー☆どろっぷ!
不思議な国のミルク
出逢いと友達
冬のキーンと張り詰めた空気を肺一杯に吸い込む。
すると肺胞の一つ一つが凍り付くような感覚に陥る。
ああ。今日も間に合わなかったのね。
目の前を鉄塊が通りすぎて行く。
私は吸い込んだ息を思いきり吐きだす。時刻は午前7時57分それに……54、55、56……。
父から誕生日プレゼントにもらった電波式の腕時計は寸分の違いもなくカチカチと秒針を残酷に動かし続ける。
あと1分。
いや、せめてあと30秒早ければ……。
そう思いながら私は首もとのマフラーに顔を埋め、ゴオオオというけたたましい轟音を響かせながら走る電車を見送った。
さあ。次の電車まであと1時間と10分。
何をしようか……。
寒さのせいで思考が完全に停止、生命を維持する事だけに集中してから20分。
もういいや、家に帰ろう。
学校なんて行かなくったって……。
どうせ学校なんて行ったってキラキラの営業スマイルを張り付けて生活しなきゃいけない。
だから本当の自分がどれなのか、わからくなっていた。
『自分を見失うのなら……やらない方がいいよ』
電車は遥か遠くへあっという間に姿を消し、あたりにはシーンという“無”だけが残る。
しかしその“無”を切り裂く囁きが私の鼓膜を微かに震わせたような気がした。