探偵の彼に追跡されて…

✻✻✻✻✻

暑い… 

痛い… 

もうヤダ…帰りたい。尾行を初めて20分。

さっきより視線が痛いんですけど…

私の格好が可笑しいのは分かっているけど、隣にいる所長がイケメンだから、余計に隣に居る私へ視線が向けられるのだ。

私は頭から流れる汗をメイクが崩れない様にハンカチでそっと抑える。

すると隣からため息と同時に肩に手を置かれ立ち止まる。
所長は右手を自分の口元へ持っていき

「渉、見失うな!」と言うと『了解』と私の耳にも嵌めているイヤホンから渉君の声が聞こえる。

そして今度は私に

「頭から湯気が出ている。コートを自分で脱ぐか、俺にここで脱がされるのとどっちが良い?」と所長は意地悪な顔で聞いてくる。

通り過ぎる人達の視線を浴びる中、道の真ん中でコートとはいえ所長に脱がされるなんて恥ずかしすぎる。仕方ない。

「自分で脱ぎます…」

私はそう言うと道の端によりダウンコートを脱いだ。

すぅーと体の中を風が通るように涼しくなりフーと私は息を吐いた。

所長は「馬鹿だな。そんなに我慢して」と言って側の自販機で買って来てくれたペットボトルの水を差し出してくれた。

「有難うございます。」とペットボトルを受け取ると代わりに私からコートを奪い取ると持っていたショップバックに入れ肩に掛けた。

「あっ自分で持ちます!」

「良いよ。デート中だからな俺が持つ。それよりそれ飲んだらちょっと急ぐぞ!」

「あっはい!」

私はペットボトルの蓋を開けミネラルウォーターを乾いた喉へ流し込む。

ミネラルウォーターはとても冷たく、熱くなっていた体を冷ましてくれる。

あぁ…生き返った…

私がペットボトルの蓋を閉めようとすると所長は私からペットボトルを奪い取りそれを飲み始める。

あっ…間接キス…

ゴクゴクと飲む所長の喉元が色っぽく思わず見惚れてしまい私の胸はドクンと跳ねた。


すると所長は「行くぞ!」と呆けている私の手を取り少し急ぎ足で歩く。

それから直ぐに太郎さんに追いつくと太郎さんは地下鉄の駅に下りて行った。

「渉、地下鉄降りたら連絡する。」

『了解!先に行きます。』

地下鉄に乗ると無線が届かなくなる為、渉君は太郎さんが向かう場所が分かっている様で先回りするらしい。





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