探偵の彼に追跡されて…
暫く彼女は車窓を見ていた。
電車は地下を走ってる。だから景色を見てるわけじゃない。

どうしたんだ?

どこか遠くを見ている彼女が心配になった。

「どうした? 難しい顔して?」

「いえ…何でもありません。」

「何か心配事があるなら言えよ? 相談に乗るから」

彼女の顔を覗き込むように聞いたが、彼女は大丈夫と言うように苦笑した。

「はい。有難うございます。でも、何でもありませんから」

彼女の返事に納得した訳じゃないが今は太郎さんから目を離せない。
彼女の事は帰ってからもう一度ゆっくり聞こう。

太郎さんは随分警戒しているのか、渉に聞いていたより何度も必要の無い乗り継ぎをしていた。

途中こんな事もあるかと持って来ていた上着を着て伊達メガネを掛け彼女にもストールを掛ける。

もし、太郎さんの目に俺達が映っていたとしても、こうすれば見た目はごまかせる近づき過ぎなければバレないだろう。

暫く電車に揺られていると太郎さんは腕時計を見た。

約束の時間が近いのだろう。丁度次の駅はいつも太郎さんが使っているホテルのある駅だ。

太郎さんは必ず次で降りる! これは俺の勘だ。

「次で降りるぞ!」

ドアが開き俺達は電車を降りたが太郎さんは降りてない。

彼女は心配になったのだろう?

「所長! 太郎さんはまだ…」

彼女は立ち止まろうとした。

「気にするな行くぞ!」

俺は彼女の手を引いて改札へと向かう。







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