探偵の彼に追跡されて…

「ダメです!! 所長? 今うちの経営状態は火の車なんですよ!? 収入が無い訳じゃない。むしろ充分有る筈なのに、おもちゃだなんだと毎日のように買って来るから、苦しいんですよ? いい加減にしてくれませんか? 来月のお家賃だって払えるかどうか…」

「だってさ、子連れの依頼者だって来るかもしれないでしょう? もし子連れで相談に来た時、落ち着いて話が出来る様に買ってるんだよ?」

何をおしゃいますか? 私の知る限り一度も子連れの依頼者が来た事は無いじゃない!? と、いうか、子連れで無くとも依頼者がほとんど来ない。

青山と言っても通りから奥に入っているし、3階建ての古い小さなビルは他のビルの影に隠れてしまっている。

たまに掛かってくる電話もほとんどが間違い電話だし。

テレビドラマじゃないけど…

『もしもし泉庵さん天ぷら蕎麦と山菜蕎麦急ぎで!』

と、1日に何度間違い電話が掛かってくるか?

その度に

『うちは蕎麦屋じゃありません!探偵社です。』

と、言って電話を切りため息をついている。

「何言ってるんですか!? こんな大きなお菓子のクレーンゲームやヌイグルミのUFOキャッチャー、うちはゲームセンターじゃ有りません! 探偵社なんですよ!?」

こまめに中の品物の入れ替えしてるし!そういう所は本当にマメなんだよね。

50畳は有るだろう部屋に事務机4つ向かい合うように置かれ衝立を挟んで応接セット。

日の当たらない窓際には大きな観葉植物が置かれ、ゆったりとした事務所。 …の筈だが

事務所にはゲームセンターに置かれている大きなクレーンゲームやUFOキャッチャーが置かれ、子連れの依頼者には落ち着いて話が出来るようにベビーベッドやオムツ、おもちゃやテレビゲームが買い揃えて所狭しと置いてある。

勿論、所長室の15畳程の部屋にもテレビゲームや漫画が溢れている。

所長は人気のおもちゃが出ると聞くと発売前日から並んで買い求める事もあるほど何故かおもちゃを買って来る。

だが、ほとんどが封を開けられずにそのまま置かれている。

そして、その殆どが年末には綺麗になくなってしまう。どこへ持って行ってるのか… やっぱり別宅かな?







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