探偵の彼に追跡されて…
「1年ほど前リストラに合いまして社長に拾ってもらったんです。家内に先立たれて独り身だったのを案じて真司からは一緒に住もうと言われたのですが、真司も結婚を考えてもおかしくない歳ですからね、もし結婚の話が出た時、私が居て進む話も進まなくなってはいけないと断っていたんです。」

「お互いが想い合っていたんですね?」

「そんな時社長に『ここで住み込みで働いてくれないか?』とお話を頂いたんです。ここなら真司も安心だろうし、お給料は以前働いていた時と同じだけだすからと有りがたいお話を頂きました。」

なんか所長らしいなぁ。困っている人が居たら放っとけ無い性分だもんね? 私の事もそうだしね?

「それならばと真司と相談して私が住んでいた古くて小さな家ですが売れば多少でもお金になるからと売りそのお金を入会時のお金にと申し上げたのです。」

「ですが社長は『そのお金は真司が結婚する時に用立てて上げるように』と受け取っては頂けませんでした。その上ここでは社員寮として1室をほぼ無料でお借りしてます。社長には足を向けて寝れません。本当にあの方は素晴らしいお方です。」

奥さんは瞳を潤ませながら話してくれた。

「本当ですね。」

私は、今まで知らなかった所長の一面を今日は沢山、見て聞く事が出来き所長に対する気持が一層深くなった気がする。






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