【完】音にならない“好き”をキミだけに。


例え俺に関係ないことでも、好きな人が泣いているのならその理由を知りたいと思うし、力になってあげたいって思う。


そう思うことは、佐倉にとったら余計なお世話になるのかな?



「加賀谷くん」

「…うん」

「ごめん。ごめんね」

「え、なにが?」

いきなり謝罪の言葉を述べた佐倉に、戸惑わないわけがない。


「わたし…、


加賀谷くんの好き、分かんなくなっちゃった」


静かに涙を流しながら、言った彼女の言葉を理解するのに時間がかかって、教室にはグランドから聞こえてくる運動部の声と、佐倉の鼻を啜る音だけが響いていた———


何か言わないといけないのに、何を言えばいいか分からなくて、多分じゃなくて絶対これは世にいう“別れ話”というやつで…。


あー、俺、振られるのか。


なんて呑気に考えた自分に苦笑した。


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