【完】音にならない“好き”をキミだけに。
*
「……え、」
「家に忘れてきちゃって」
「そ、うなんだ」
放課後、職員室にいる担任の元へ来た俺の前にいたのは佐倉。
……本物だよな?
「じゃあ、加賀谷と佐倉“2人で”頑張ってな」
異常に“2人で”の部分を強調しながら、俺に資料を手渡した。
「佐倉、ちょっと先に行っててくれるか?俺、加賀谷に言うことあるから」
「分かりました」
佐倉の姿が職員室からなくなったことを確認して、担任はニヤニヤしながら俺を見た。
「せっかくチャンス作ってやったんだから頑張れよ〜」
「は!?」
「敦弥から聞いちゃった」
……そうだった。
敦弥の入ってる委員会は、担任が担当する委員会だったか…。
「奥手な真白の為に、佐倉と2人っきりになれる時を作ってあげてって言われてたんだよ。不自然にお前らを2人っきりにするのは無理だったから時間かかっちまったけど…」
いつもなら、何やってくれてんの、敦弥。
と、怒る場面だが今回はそうにもいかない。
「ありがとうって、敦弥に言っといて下さい」
「自分で言えよ」
それは、気が向かないとちょっと無理かな。