【完】音にならない“好き”をキミだけに。





「……え、」

「家に忘れてきちゃって」

「そ、うなんだ」


放課後、職員室にいる担任の元へ来た俺の前にいたのは佐倉。


……本物だよな?


「じゃあ、加賀谷と佐倉“2人で”頑張ってな」


異常に“2人で”の部分を強調しながら、俺に資料を手渡した。


「佐倉、ちょっと先に行っててくれるか?俺、加賀谷に言うことあるから」

「分かりました」

佐倉の姿が職員室からなくなったことを確認して、担任はニヤニヤしながら俺を見た。


「せっかくチャンス作ってやったんだから頑張れよ〜」

「は!?」

「敦弥から聞いちゃった」

……そうだった。


敦弥の入ってる委員会は、担任が担当する委員会だったか…。


「奥手な真白の為に、佐倉と2人っきりになれる時を作ってあげてって言われてたんだよ。不自然にお前らを2人っきりにするのは無理だったから時間かかっちまったけど…」


いつもなら、何やってくれてんの、敦弥。


と、怒る場面だが今回はそうにもいかない。


「ありがとうって、敦弥に言っといて下さい」

「自分で言えよ」


それは、気が向かないとちょっと無理かな。


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