【完】音にならない“好き”をキミだけに。
「え、じゃあ、俺が楓生ちゃんの彼氏に立候補していいの?」
聞きたくなくても聞こえてくる大きな声。
「えっ、いや…声大きいよっ」
あぁ、佐倉が照れてる顔が想像できる。
ストレートに気持ちをぶつけられると、顔を真っ赤にして嬉しそうに佐倉は怒っていた。
怒られてるのに怖さなんて全くなくて、むしろめちゃくちゃ可愛くて、それに笑ったらまた怒られてた。
佐倉はあいつにそういう顔を見せてるのだろうか……。
“楓生ちゃん”
俺は呼びたくても呼べなかった。
恥ずかしかったから。
……呼んでたら、佐倉はどんな反応をしてくれただろうか。
嬉しそうに笑ってくれたかな。
恥ずかしそうに照れたかな。
それとも、嫌だって思ったかな……。