【完】音にならない“好き”をキミだけに。


「振られたくせに、未練タラタラ。ここに来たのだって彼女が廊下で男と話してるの見て傷ついたから」


たったそれだけの理由。

俺ってこんなに弱かったんだ。


「俺、こんなんで佐倉のこと忘れられるのかな」

「……忘れなくていいと思うよ。それだけ好きなんだから、無理して忘れようとしなくていいじゃない」


でも、それじゃあいつまで経っても前に進めない。

「加賀谷くんは、忘れたいの?」

「え…」

“忘れたい”か“忘れるか”なんて考えたことなかった。


“忘れないといけない”って気持ちが強くて、ただそれだけで…。


「忘れたくないなら、忘れなくていい。諦めたくないなら諦めなくていい。迷惑かかる?泣かせる?いいじゃん。だって、加賀谷くんも同じくらい傷ついたんだから」


そんな風に考えたことなかった。


振られたら終わりで、俺にはさよならの選択肢しかなかったから。


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