【完】音にならない“好き”をキミだけに。


そんなこと敦弥に言っても、あいつは絶対


「オープンで応援してくれればいいから!」


と言うに決まってる。

そうなる方が面倒くさくなりそうなので、敢えて何も言わないのがベスト。


「佐倉さん!」


敦弥のことを考えていた俺を現実に戻すように聞こえてきた、佐倉の名前を呼ぶ男の声。


視線を声がした方に向けると、そこには隣のクラスで佐倉のことがずっと好きだと公表してる南原くんの姿があった。


頭がすごく良くて、恋愛に興味なさそうな彼だが、とてつもなく積極的なんだ。


だって、ほら。


彼氏である俺が佐倉の横に立っているのを無視するように佐倉に話しかけようとする南原くんには若干苦労するものがある。



「僕と後夜祭の花火一緒に見てくれませんか?」


ありえないよね……。


南原くんに一回聞いてみたいよ。


俺のこと見えてますか?って。


『あぁ、加賀谷くん。いたんですか』

とか言われそうだから、言わないけどさ。



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