【完】音にならない“好き”をキミだけに。


「いつからですか?」

「秋くらいからね……。わたしと旦那がよく喧嘩するようになって」

「え…」


『分かんないよ…。なんで?好きって気持ち無くなるかもしれないのに、加賀谷くんはそんなふうに……』


…だから、だから、佐倉はこんなにも苦しんでいたんだ。


「今も喧嘩よくしてるんですか?」

なんて、デリカシーの無い質問なんだと思ったけど、そんなの気にして暇なんてないから。


思えば、佐倉の左側にいた時、呼びかけても返事がない時があった。

佐倉は佐倉なりに、俺にサインを出してくれてたのかもしれないのに…。


「何やってんの、俺…」

こんなやつが佐倉のそばにいたいなんて、思ってもいいのか。


佐倉は俺といない方がいいんじゃねーの。

なんて、負のことしか考えられなくなる。


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