【完】音にならない“好き”をキミだけに。
だけど、家に帰らないなんてことは高校生のわたしには無理なこと。
「…おかえり、楓生」
「ただいま」
家に帰ると疲れた顔をしたお母さんがソファーに座りながら、テレビを見ていた。
「喧嘩ばかりごめんね」
……謝るなら、喧嘩なんかしないでよ。
仲の良かった2人に戻ってよ。
なんて、そんなことお母さんには言えなかった。
だから、何も言わずに首を横に振った。
何を言えばいいのか分からなくて、どうしたらいいのかわからなくて。
わたしには、何も出来ないんじゃないかって思い始めて、部屋に戻った。
今日も、2人の声が聞こえてくる。