【完】音にならない“好き”をキミだけに。
怖かったんだ。
わたしの耳のこともあってか2人の仲はどんどん悪化していったと思う。
自分でも気付いていくほど、右耳は聞こえなくなっていく。
聞きたくないと思えば思うほど、2人の声は聞こえなくなって、考えれば考えるほど寝れなくなった。
学校も休みがちになっていた頃、
「……ごめんね、楓生。お母さんとお父さんもう無理かもしれない」
その言葉はしっかりと、わたしの耳に届いた。
それが、加賀谷くんとクリスマスを過ごした2日後のことだった。
いつかは、加賀谷くんもわたしの隣から居なくなっちゃうのかな。
耳が聞こえなくて、加賀谷くんの伝えてくれる“好き”が分からなくなったら、加賀谷くんは離れていっちゃうのかな。