【完】音にならない“好き”をキミだけに。
そう思う俺は、相当佐倉のことが好きなんだと思う。
……って、そんなの当たり前か。
*
「真白くん、真白くん」
「無理」
「まだ何にも言ってないんだけど」
放課後、佐倉を誘って帰ろうとした俺の元に来たのは、敦弥。俺のことをくん付けして呼ぶ時は、大抵変なお願いをしてくる時だ。
だから、今回も決まって変なお願いだろう。
できれば聞きたくないけど、いつの間にか俺の腕を掴んでいて、離してくれる気配が一向にない。
「なに?」
一応聞くけど、お願いだから、無理なことは言わないで。
「……バレンタインの日、ダブルデートしない?」
「無理」
「うん、だよね。それは分かってるんだけど、本気でお願い」
なんでだよ。
そういう日こそ、敦弥は紫乃ちゃんと2人が良いって言いそうだけど…?