【完】音にならない“好き”をキミだけに。
「大変じゃないですよ。加賀谷くんにわたしには本当、勿体ないくらいいい人です」
さも、当たり前のように言う佐倉に、担任は少し驚いたような顔をした。
……俺も驚いてます。
逆なのに。
佐倉は俺には勿体ないくらいいい人で、1年も付き合ってられることが奇跡だ。
なのに佐倉は、自分には俺が勿体ないと言うんだ。
「…俺は加賀谷に佐倉は勿体ないって思うけど。クラスの奴もそう思ってるの多いだろ」
こら、俺が思うのはいいとして担任が言うのってどうなの。
本当のことだけどちょっと傷つく。
「みんな加賀谷くんのいい所全然知らないから、そういう風に言うんです。知られちゃって加賀谷くんのこと好きな人現れたら嫌だから言わないわたしは性格悪い女ですよね」
笑いながら、でも、どこか寂しそうな表情を佐倉は浮かべた。