【完】音にならない“好き”をキミだけに。
「じゃあ、行こうか」
靴を履き替えて、佐倉の手をぎゅっと握った。
「サラダとかスープもあったらいいよね~!」
「佐倉、2人だけしかいないからたくさん作ったら食べられねーよ」
「えっ!?今日って加賀谷くんの家族いないの?」
「あれ言ってなかったっけ?俺たちしかいないから緊張とかしなくていいよ」
だから、さっきから佐倉いつもよりピンッとしてたんだ。
「また今度、改めて家族に会ってよ」
俺がそういうと佐倉は
「……うん、会えたらいいな」
嬉しそうに、だけどどこか寂しそうな表情をした。
最近、佐倉がよくする表情。
だけどすぐに佐倉は
「加賀谷くんサラダなら作れるかな~」
「俺のことバカにし過ぎだから…」
いつものように笑顔に戻った。