【完】音にならない“好き”をキミだけに。


佐倉に泣かれることが一番嫌だ。

「言ったら加賀谷くん、わたしのこと嫌いになっちゃうよ」

そんな悲しいことを、笑って言わないでよ。

「佐倉…」

隣に座っている佐倉の肩を引いて、抱きしめた。

「大丈夫だ、大丈夫」

ごめんね。何も出来ない俺で。

「嫌いになんかならねーから。
俺が佐倉のこと嫌いになるわけないじゃん。こんなにも好きなのに」

何も出来ないけど、佐倉のこと嫌いにならないことだけは誓えるから。

だから、もう泣かなくていいんだよ——


「ありがとう」

結局、佐倉は泣いた理由を話さなかった。

佐倉が泣き止むまでずっと抱きしめてた俺だけど後々になってすごい恥ずかしくなったのは佐倉には内緒。

< 88 / 235 >

この作品をシェア

pagetop