紫色の水溜まり。
「...前にね、私、ある人に言われたの
"君は、紫陽花みたいだね"って」
「...それは、名前のこと?」
「そうじゃないと、思うんだ」
名前、私の名前は "紫陽-シハル-"だ。
だから、七瀬くんはそう思ったんだろう。
けれど、私はそうじゃないと知っている。
「...紫陽花のね、花言葉って知ってる?」
隣の家に住んでいた、"あの人"は、周りとはどこか違って、不透明な人だった。言葉数は少なくて、いつも何を考えているのか解らなかった。けれど、彼の隣は落ち着いて、私はそんな彼が、嫌いじゃなかった。