夜まで待てない
揺れる心と失態
私はスマホのアラームの音で目が覚めた。
時刻は五時半。
私はベッドから起き上がると羽月の部屋に向かった。
「羽月、起きて!」
私は羽月の体を揺さぶった。
「んっ…頭痛てぇ…」
「飲み過ぎたからだよ。」
「アレ?俺、いつの間に服を脱いだんだ?
それに家にいつ帰ったのかも全然、覚えてねぇわ。」
昨夜の事を覚えてないって事はキスした事も服を脱がさせた事すらも記憶にないんだ…。
悲しい気持ちも多少はあるが、覚えてなくてホッとしてるのも事実だ。
自らキスに酔いしれた事を思い出すと顔が熱くなる。
「どうした優子?何か顔が赤いけど風邪でもひいたのか?」
そう言いながら私のデコに手を当てた。
「…っ!!だ、大丈夫だよ!」
「確かに熱はないな。起こしてくれてありがと!俺シャワー浴びてくる。」
そう言った羽月はシャワーを浴びに浴室に行った。
急にデコなんて触るからドキドキしてしまい、意識してしまってるのが自分でもわかった。
何とか気持を落ち着かせて私は歯磨きをして顔を洗って用意をした。
私が用意を終わらせてリビングに行くと、着替えを済ませた羽月がコーヒーを淹れてくれていた。
「はい!」
「ありがとう。」
私はマグカップを受け取りコーヒーを飲んだ。
「俺、完璧二日酔いだわ。日本酒かなり飲み過ぎたな。」
「確かにね…お父さんも帰る時は寝てたしお兄ちゃんに車まで羽月を乗せてもらったもん。
マンションに着いて部屋まで連れて帰るのも大変だったしね。」
「迷惑かけてごめんな?俺マジで記憶になくて飲み過ぎには気をつける。
さっ、薬も飲んだし今から仕事に行ってくる。」
そう言って羽月は鞄を持って出ようとした。
「羽月っ、ネクタイ曲がってるよ。」
「じゃあ…優子が真っ直ぐしてくれる?」
そう言って私の前に立った。
私はマグカップをテーブルに置いて羽月のネクタイに手を伸ばした。
至近距離でネクタイを直してたら昨夜のキスが頭に浮かんでドキドキしてしまう。
さっき気持を切り替えた筈なのに昨夜から変だ私。
「出来たよ!」
「サンキュ、行ってきます!」
そう言った羽月は私の頭をポンポンとしてマンションを出て会社に向かった。