ティアラ
翌日は早朝から家を出ていた。

弥生ちゃんから住所を聞いていたあたしは、ずっと深町家の前をうろうろしている。

「……ちゃんと洗って、帰ってきたんだ」

小さな門の中には深町の自転車が置いてあり、つけたはずのうんちは綺麗になくなっていて、ペダルは外れたままかごの中に入っている。

押して帰ってきたんだろうな。

その姿を想像するだけで口元が緩む。

深町に見つからないよう、一応、変装はしている。

髪の毛をアップにして、母親愛用の黒い帽子を深くかぶり、「いつかモデルになったときに使おう」と思って買っていた大きめのサングラスも着用。

絶対にあたしだとバレない自信はある。
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