ティアラ
電柱に隠れて深町家の玄関を眺めているあたしは、「まだか、まだか」と奴が出てくることを心待ちにしていた。

しばらくして、ドアがゆっくり開く。

「待ってました」

長袖の青いジャージを着た深町を見て、にやりと笑うあたし。

大きめのスポーツバックを肩に掛け、庭の奥に置いてあるサッカーボールを持ち、門の外に出る彼。

見られていることも知らず、のんきに歩いていく姿が面白くて仕方がない。

だけど、彼はあたしに面白い光景を見せてはくれなかった。


「……何これ」

ワクワクしながら後をついてきたあたしは、近くの公園で子供たちと一緒にサッカーをし始める深町を見て、ハァッとため息をつく。
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