ティアラ
しゃがんだまま両手を膝の上に置き、面白くない光景をぼんやり眺める。

数人の少年たちに混ざって、ボールを追いかける姿。

転んだ男の子に手を差し伸べ、にっこり笑いかける笑顔。

「……あんな顔もできるんだ」

思わず、つぶやいてしまった。

いつも皮肉な笑顔ばかり見ていたから、さわやかな表情なんか持っていないと思っていた。

どれくらいの時間、観察していただろう?

結局、ネタにできるものはなかった。

少年たちと別れた深町は、そのまま家とは反対の方向へ歩いていく。
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