ティアラ
太一の手の甲には、2、3、切り傷が入っていた。

気づかれたのが嫌だったのか、彼はあたしのその言葉を聞いた瞬間、手を後ろに隠した。

「何でもねぇよ。ちょっと転んだだけ」

太一はブスッとした顔で、向こうをむく。

……絶対、嘘だ。

手のひらにすり傷ならわかるけど、転んで、手の甲に縦の傷が入るわけがない。

昨日、直子に言われた言葉を思い出した。

「昨日は助けてくれてありがとう。……傷、大丈夫?」

礼を言うと、太一はギクシャクしながら、小さな声で「おう」と返してきた。

照れくさいのか、太一は頭をポリポリかく。
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