ティアラ
「てことで!」

パッと片手をあげて、太一の側から離れていくあたし。

「おい!」と慌てる太一の声にも振り返らず、尾行を続ける。

眼鏡をかけて出てきた深町は、人ごみで溢れる街を早足で歩く。

帽子のふちを眉が隠れるくらいまで下げるあたしは、人にぶつかりながらも駆け足で追いかけていた。

彼が次に入った店は、自転車屋さん。

飾られている色とりどりの自転車を見下ろしながら、店員さんと話をしている。

笑いが止まらなかった。

「やっぱり、もう乗りたくないんだぁ!」
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