ティアラ
作戦が成功していたことがわかっただけでも、この尾行は無駄じゃなかった。

深町は、2万円もする高校生にしては高い自転車を選んだ。

「ふん、見栄っ張りめ。……まぁ、代わりに乗る自転車が中古だと、あたしに馬鹿にされるかもしれないもんねぇ」

隠れて見ているあたしは、楽しくて仕方がなかった。

だけど、次の瞬間、あたしは真顔になる。

帽子を浮かせ、サングラスをずらしながら、辺りをきょろきょろ見渡す。

「……まただ」

今、視界の端でピカリと光るものが見えた。

あたしは鋭い顔つきで、目の前を通る人々の中にカメラを持っていそうな人間を探す。

だけど、目に映るのは、日曜を満喫するカップルや夫婦。

何人もの若い男女が目の前を交差するように通り過ぎていく。
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