ティアラ
人がたくさんいるせいか、深町は自転車には乗らず、押して歩いていく。

どうやら、もう買物は終わったみたい。

彼は来た道を戻って、家に帰ろうとしているようだった。

「結局、ネタになるようなものは見つからなかったなぁ」

小さく舌打ちはしたけれど、念のため、家に入るところまで見届けてみようかと思い、まだ後をつけている。

最後の最後で何かあるかもしれないし。

さっきまで繁華街にいたから、住宅街が静かに感じてしまう。

15メートルくらい距離をあけて、電柱や曲がり角に隠れながら、彼の後姿を眺めるあたし。
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