ティアラ
きょろきょろ周りを見渡すあたしは、無事に携帯電話を見つけることができた。

だけど、それは森本の足元に落ちていて、取りに行くことはできない。

「僕のことを覚えてる?」

動けずにいるあたしの前でしゃがみ、森本は初めて言葉を口にした。

直子の話では、この男はあたしに告白をしたことがあるらしい。

だけど、あたしはこの顔を見ても、なんとなく見かけたことがあるかなぁって思うだけで、その告白のシーンまで思い出すことができない。

「……僕は百瀬さんを初めて見たとき、大好きな本“白い妖精物語”の6巻からでてくる“花の妖精”に似ている気がしたんだ。華やかで……繊細で、美しくて」
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