ティアラ
慌てて、彼の腕を持つあたし。

座られないよう、その手に力を入れて彼を起こしていく。

「……土下座とかしてほしいわけじゃないし。……感情の入ってない謝り方をされても、気分が悪いだけよ。そ、それに、あたしだけの問題じゃなく、美緒ちゃんや……」

弥生ちゃんにも仕返しをしてほしいって頼まれてるんだから、と言いかけていた。

だけど、あたしの話をさえぎって、深町は声を重ねてくる。

「彼女にはもう謝った。……弥生を通して」

そう言って、彼は拾った鞄を肩にかけて、あたしに背を向けた。

「もう仕返しはしなくていい」と言ってきた美緒ちゃんたちの姿が頭の中に浮かび、同時に嘘をついていたことの後ろめたさが、胸を強く締め付ける。
< 244 / 555 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop