ティアラ
太一の心境を察しているからなのか。

楽しく話すあたしたちのそばで、直子はずっとうつむいていた。

「さてと。そろそろ我慢の限界だからトイレへ行ってくるね」

我慢なんてしていなかったけれど、あたしはこの場を抜け出すために嘘をつく。

「じゃあ、俺たちも校内へ戻るか」

「……うん」

一緒についてこようとする、ふたり。

「それじゃ意味がない」と思ったあたしは、慌てて「休憩時間はまだ残ってるし、今日は天気がいいんだから、あんたたちは光合成しときなさい」と言った。

手で追い払うと、ふたりは渋々、足を止めていく。
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