ティアラ
その後もあたしと深町は、喧嘩腰でモノを言い合い、足を進めていく。

周りにいるのは家族連れやカップルばかり。

同じ年代のカップルとすれ違う度、あたしは勝ち誇った気分になる。

どのカップルを見ても、あたしたち以上の容姿を持つ者はいないからだ。

悔しいけれど、深町もそこそこ男前だし、当たり前のことなんだけど、女の子だってあたし以上の美しさを放つ者がいるはずもなく……。

「あたしを連れて歩いてることを喜びなさいよ」

気分をよくしたあたしは、得意げな態度で口にした。

すると、深町は目を細めて「人ばかり見てないで魚を見ろよ」と言ってくる。
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