ティアラ
最寄りの駅までの道、あたしは可笑しくなった自分に戸惑っていて、口数が少なくなっていた。

「あと10分くらい待たなきゃいけねぇみたいだな」

そう言って、隣に座る深町。

ふたり掛けのベンチだから、体がぴったりとくっつく。

なぜか照れてしまったあたしは、むくっと立ち上がり、早く来ないかなと思いながら、線路の向こうを眺める。

「だから、まだ来ないって。座れよ」

ベンチに腰かけている深町は、あたしの行動に呆れながら、隣の席を叩く。

「いやらしいこと考えんじゃないでしょうね!?」

「はぁ?」

怒鳴ると、彼は表情を歪めた。
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